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【WISE EGG松裏さんインタビュー】インドネシア/タイを中心としたスタートアップの苦労と今後の展開

本記事では、IGL DX(リンク)との共同記事として、インドネシア・​​タイを中心とした事業を起業した松裏さんの各国での事業展開の特徴や東南アジアでのスタートアップ運営の苦労、今後の展開について伺いました。

本インタビューは、IGL DXとの共同で行っています。
松裏さんが東南アジアで起業したきっかけや現在の事業の具体的な内容はこちら(IGL DX)から。

松裏  剛志(まつうら・たかし)さん
WISE EGG PTE. LTD. 創業者/CEO

高校時代から6年間アメリカに留学し、帰国後株式会社インタースペースに入社。6年ほど勤務したのち株式会社デジタルガレージに転職したが、インタースペース社の東南アジア進出に合わせ復帰。インドネシアに7年ほど駐在したのち、2019年にシンガポールでWISE EGGを設立。同社CEO。
東南アジアでする展開サービス「MoneyDuck」についてはこちら

1. 東南アジアにも多数の地域がありますが、なぜインドネシアとタイでの事業展開を決めたのでしょうか。

現在、お金の専門家と、お金について相談したいユーザーをつなげるマッチングプラットフォーム「MoneyDuck」(https://moneyduck.com/about/)をインドネシアとタイで運営しています。


(写真:MoneyDuck)現在はタイとインドネシアで主なサービスを展開。今後さらに東南アジア各国への展開を目指す。

2013年頃からインドネシアに駐在していた時に東南アジア各国の状況を知り、東南アジアで最も大きく、かつ、伸びるマーケットはインドネシアだと感じました。インドネシアで事業を行う事は、当初から強く考えていたことであったこともあり、まず、インドネシアで事業を行う事を決定しました。しかし、インドネシアで事業を進めるにあたり、インドネシアの慣習などから、マネタイズの難しさや売上があがっても代金が払われないことが多くありました。その為、タイでもサービスを展開し安定した収益をあげてリスクヘッジをしつつ、インドネシアのマーケットで売上を大きく伸ばしていくという経営戦略を立てることにしたんです。

このように、2ヵ国目をタイに決めたのは、タイはインドネシアに比べて金融などのサービスに対するリテラシーが高く、慣習的にインドネシアよりもマネタイズや代金回収に苦労せず安定した経営が見込めたことが理由です。

 

2. 次に展開する予定の国はあるのでしょうか。

今後はベトナムへの進出を考えています。従来から中国から工場が移転してきていて生産性が高くなってきておりGDPも順調に伸びていますし、現在のベトナムの状況が5~6年前のインドネシアに似ていて金融マーケットを含めて今後確実に伸びると考えています。

我々の事業にとって、金融の専門家に相談する必要性が高まるフェーズに備えることが重要な為、今後も各国の状況に応じてベトナム以外への展開も検討していきます。


(画像)次に展開を考えるのは近年注目を浴び続けるベトナム。コロナ後にさらなる成長が予測される。

3. 東南アジアでの起業は日本と異なることも多いと思いますが、現地ならではの苦労はあるのでしょうか。

日本人だから大変ということは感じていません。逆に、よく言われていた”親日国”や”日本人ブランド”などは、現地ではあまり感じる事はありません。

各国異なる法制度・文化慣習の国での事業運営となるので、それらを理解しつつ事業を成長させることは起業家としてもちろん大変なことはありますが、他の起業家にとってもそれは同じだと思っています。

言語面では、まず私はタイ語はできません。インドネシア語は滞在歴も長く妻がインドネシア人なこともあってある程度は分かりますが、やはり契約書関係になると難しくなるのでそういう時は英語を介してコミュニケーションしています。キーとなるポジションに英語ができる人材を配置すれば言語面でも全く問題ないと思います。

マーケティング面の苦労としては、事業を様々な国に展開していく上では、インドネシアではWhatsApp、Facebook、Instagramなどがメインで、タイほどLINEが有名ではなかったりと、情報取得チャネルが国ごとに異なっているので各国に合ったSNSでカスタマーサポートを行なう必要があることですね。サービスとしては統一のプラットフォームを目指したいところですが、一部、各国の状況に合わせてローカライズしないといけない大変さはあります。今後、ベトナムに展開する場合はZaloという現地アプリにも対応していかいといけないですし、さらに手を広げないといけませんね(笑


(写真)現地スタッフと撮影

4. 最近の各国の事業の成長はいかがですか。

MoneyDuckでの専門家とユーザーのマッチング数は、タイ・インドネシア共に順調に伸びています。今まではSEOメインで集客をしていましたが、直近では日本と同様に流行しているTikTokの運用を開始しました。TikTokでは比較的カジュアルな記事の配信をしており、他にもFacebookやInstagramなどSNSを運用して幅広い層へのマーケティングに力を入れています。

*外部リンク:東南アジアで展開しているお金の相談マッチングサービス「MoneyDuck」がマッチング数10,000件を突破(PR TIMES)

(Link)2021年12月末の時点で「MoneyDuck」のマッチング数が、10,000件を突破した

またeKYC(電子上での本人確認)システムの導入や、個人単位ではなくチーム単位で顧客を管理できるシステムの導入など新機能も続々とリリースする予定で、今後、専門家にはモバイルアプリも提供していく予定です。

それに加えて、MoneyDuckでも金融の専門家チームを自社で構築し、金融商品のアドバイスをユーザーに行っています。今までは外部の専門家と顧客のマッチングを行っていましたが、MoneyDuck所属の金融専門家が対応する場合は、外部機関の商品を代理店のような形で販売を行い、商品の成果報酬MoneyDuckに入ってくるような流れです。自社で専門家を置くことで、今まで不透明だったマッチングした後の細かい相談内容も把握でき、サービス機能の改善に役立てることが狙いです。すでに10社ほどMoneyDuckとの代理店契約を結んでおります。

 

5. 東南アジアでスタートアップを行なう上で、資金調達は問題なく可能なのでしょうか。

資金調達は、正直かなり大変でした。WISEEGGの場合、後発企業に事業をコピーされてマーケットを奪われることを避ける目的もあり、ステルス(隠密)で事業を展開してきた為、知名度がかなり低い状況でした。

日本の投資家の発言を見ていると海外事業への関心も高かったので、海外への投資にも積極的だと思っていましたが、実際話してみると海外企業への投資を実行できないケースも多かったです。そこで、方針を変え海外VCからの調達を考えましたが、ステルスで活動していた為、現地の認知度も低く、戦略が裏目に出ました。その為、最近では積極的に事業状況などをプレスリリースで配信しており、それからはアメリカ、シンガポール、インドネシアなどの有名VCからも連絡が来る様になりました。

会社やサービスの認知度も重要ですが、投資家の方はチーム体制もよく見てきます。特に外国人が海外で企業する場合、現地のスタートアップに比べて文化や習慣の理解度や現地企業とのパイプライン構築など、事業の再現性は低く見られる傾向にあります。

(写真)東南アジア各地で活躍する起業家とのパネルディスカッションでの一枚

外国人でも事業の再現性を高く実行できるチーム体制の構築は非常に重要と考えています。

このあたりはアーリーステージだからこその苦労ですが、最初から海外で起業される方には注意いただきたい点ですね。

その他、シンガポールでのスタートアップで苦労したのは金融機関からの借入ができない点でした。日本に拠点があれば日本政策金融公庫の創業融資を検討できることなど、そんなことは知らずにシンガポールで起業してしまったので、個人で借入した分を事業に回したりと苦労しました。

もちろん、シンガポールをヘッドオフィスにするメリットもありますが、資金調達や事業計画によって最初からきちんと検討すべきだということは感じています。

 

6. 海外事業の展開において、支援者に期待したいことなどはありますか。

海外でのスタートアップでは、資金調達も業務展開も日本とは異なることが多くあり、日本とは異なる現地目線やグローバルのスタートアップマーケットの目線でのアドバイスをもらえるととても心強いです。

また、弊社の業務でいえば、やはり法務関係での支援も重要です。英語も関わってきますし、そもそも日本で浸透してない事柄や論点が多く発生します。例えば創業者間契約や投資契約なども日本ベースか海外ベースかで結構違ってくると思うので、そういったことを相談できる先があると嬉しいです。事業においても、特に個人情報や金融関係に関わる事業をしていることもあり、一番時間がかかってしまうのが法務関係なので…。

 

7. 今後の事業展開について一言お願いします。

早くこのサービスを東南アジアに浸透させていきたいと思っています。
金融機関側には非効率なマーケティング活動を改善し、生産性を高め、ユーザー側にはMoneyDuckを通じて金融商品のアドバイスを提供することにより、金融リテラシーと金融アクセスの向上をミッションして掲げています。

早く実数値として我々の事業の拡大を発表できるといいですね。今年からマネタイズなどを本格的に行っていきますので、ミッションを達成することを第一に、各国で地道にサービス展開をしていきたいと思います。

現在、WISEEGGにはシンガポール本社とタイに支社があり、インドネシア拠点の設立を進めている段階です。日本での開発も行っており、そこで日本人のシステム開発者と将来的にはインターンを積極的に採用する予定です。エンジニアはインターン生も含めて募集しています。共感していただける方は、ぜひご連絡ください。

*問い合わせページはこちら

*IGL DXからの松裏さんへのインタビュー記事はこちら(松裏さんが東南アジアで起業したきっかけや現在の事業の具体的な内容について)

Matsuura-

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