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【TAGGER宮本さん】キャラクターと一緒にベトナムの子どもたちを笑顔にしたい

「ベトナム中の人に一生忘れられない瞬間を創ること」をミッションに掲げ、キャラクターを通じて思いを届ける会社、TAGGER。ベトナムでキャラクターの版権管理を展開。イベント興行、グッズ商品化、映画配給・映像配信およびローカライズを行っており、現在は日本のキャラクターの『ドラえもん』、『ワンピース』、『ドラゴンボール』、『名探偵コナン』、『クレヨンしんちゃん』、『Dr.スランプ(アラレちゃん)』『THE FIRST SLUM DANK』、サンリオの各種キャラクターなどを扱っています。本記事では、創業者である宮本さんにベトナムでのキャラクター市場やご自身のミッションなどについて伺いました。

〈プロフィール〉
宮本 洋志(みやもと ひろし)さん
TAGGER Founder/グループ代表

1981年兵庫県尼崎市生まれ。青山学院大学英米文学科卒業後、日本の玩具メーカーに勤務。2009年にベトナムに渡り、キャラクターの版権事業をスタート。2013年にTAGGERを設立。「ベトナム中の人に一生忘れられない瞬間を創ること」を理念に事業を行っている。
TAGGER社Website: https://tagger-vn.com/

ベトナムにきてキャラクター事業を始めようと思ったきっかけを教えて下さい。

15年前、たまたまベトナムに友人がいたので休みを使って訪れたのがきっかけでした。

学生時代の話になりますが、僕の父はプロ野球選手だったため、僕も幼い頃から野球ばかりしていました。僕はなんとなく野球ができたので自分のアイデンティティがないまま野球を続けていたんです。先生方は僕に対してとても良くしてくれたのですが、それは僕ではなくて父に会いたいからだったんですね。こうして野球を続けていく中で、「自分は父の息子である前に1人の自分だ、そうあるためには野球を辞めるしかない」と考えたんです。野球なしでは高校に行く意味を感じず、そのまま高校を中退しました。父のいない世界に行くには海外しかない、と考え、大検をとって大学に行き、たくさん勉強をしました。その後、自分のアイデンティティを求めて友人のいるベトナムへ行きました。

初めて降り立ったベトナムの空港で、たくさんの人を見て「僕はこの人達を喜ばせるために生まれてきたんだ」と感じたんです。この瞬間に感じたベトナムの人達を喜ばせたいという思いをそのまま事業という形で表現しました。

なぜ「人を喜ばせたい」と思うようになったのですか

「人を喜ばせたい」と思うようになったのは、父と母、特に母の影響です。母からはいつも「あなたは人を喜ばせるために生まれてきた」と言われていました。だから誰を喜ばせたらいいか、喜ばせるとはどんなことか、人を喜ばせたら自分も幸せになれるか、ということを悩み続けてきました。

「僕は誰のために生まれてきたんだろう。」と長年悩んできて、空港に降り立ったあの瞬間に「ベトナムの人のために生まれてきた。」と感じました。母親からは「人を喜ばせなさい」、父親からは「野球を辞めたんだから自分の道は自分で決めなさい」と言われていました。その答えがベトナムの空港に降り立った時にばっちり出たんです。そこで直感的に、ベトナムで人を喜ばせる仕事がしたいと思いました。

_その中でもなぜキャラクターで子ども達を喜ばせたいと思うようになったのですか

子どもたちはベトナムの未来です。ベトナムの未来がもっと明るくなって、皆が胸を張って、お互いが助け合える優しい世界になってほしいと思い、とにかく子どもたちを喜ばせようと考えていました。しかし、宮本洋志1人で楽しませることができる子どもの数には限界があります。だからこの僕の思いを何かに託そうと考えた先が、キャラクターであり、ドラえもんだったんです。自分がどんな価値を作り、どうやって人を喜ばせられるか、僕は何ができるかを最終的に形にしたのが事業でしたね。

実際にベトナムで事業を開始されて、日本と違う部分はどのようなものだったでしょうか。

事業を始めた時期は著作権への理解はほとんどありませんでした。今でもだいぶ薄いですけどね。それ以外にも、当時のベトナムには日本にあるようなおもちゃを作る会社がなかったので綺麗な顔の整ったドラえもんのおもちゃがありませんでした。知的財産はとても人気で、これを管理して運営する会社は世界中にあります。しかし僕らが進出した時のベトナムでは、著作権を扱った会社はほぼありませんでした。こうした状況から著作権への理解が非常に低かったため、地元企業に対しての著作権の価値の説得は非常に苦労しました。

_事業を始める前はドラえもんはベトナムでどのように扱われていたのですか

実際、僕たちが版権管理を始めるまで、ベトナムでは正規でドラえもんを扱った商品は漫画しかありませんでした。ドラえもんを漫画を通して読むことはできても、アニメや映画を通してドラえもんを聞いたり、感じたり、イベントを通して実際に会ったりすることはできませんでした。ドラえもんはそれまでも日本のアイコンとして人気のキャラクターでしたが、そのグッズのほとんどは著作権を無視した偽物だったんです。偽物のドラえもんは本物と比べてクオリティが低いことが多いです。

どのようにして現地企業に著作権の価値を理解してもらったのですか。

地道に著作権の価値についての説明を繰り返しました。これには2つの観点があります。1つ目は、「なぜ版権管理は必要なのか」という点です。作者はなぜ海賊版を好まないのでしょうか。それは、キャラクターに託した思いがそのまま届かないと困るからなんです。藤子・F・不二雄先生は子ども達を喜ばせるためにドラえもんを作りました。ドラえもんはいつもひみつ道具を使ってのび太くんを助け、周りの人を喜ばせていますよね。みんなが誰かのためのドラえもんになれば、またその誰かが誰かのためのドラえもんになっていく。そんな世界が来てほしいという願いをこめて、ドラえもんは生まれました。だからこそ、ドラえもんが愛されるためには、世界観を守ったまま、作者の思いが正しく伝わらなければなりません。だから版権管理は必要なんです。

二つ目は法的にキャラクターを守ることです。いわゆる商標登録ですね。「売れるから」という理由でドラえもんを扱う企業はたくさんあります。僕たちTAGGERがやりたいのは、ドラえもんを好きな人を増やすことです。ただ版権を売る仕事ではなく、ドラえもんのファンをもっと増やしてもっと愛されるようにする仕事です。これらのことを納得してもらうまでにはかなりの時間が必要でしたね。結果、「会社の商品を通じてどんな未来を作りたいか」というコンセプトが明確な企業様とお仕事をする機会が多くなりました。だからこそ、ドラえもんがより愛されるようになったのかもしれないですね。

_実際にドラえもんに会えるというのはきっと子ども達にとって忘れられない瞬間になりますよね。

ドラえもんがたくさんの子どもたちに愛されるには、ドラえもんを見る・聞く・触れる・会える、の4つの機会が必要だと考えています。僕らがやっているのはマーケティングではなく、ブランド事業なんです。つまり僕らは版権管理を通じて価値を上げる仕事をしています。子どもたちにはドラえもんとのふれあいを通して、ドラえもんのように優しくなってほしい。ルフィの雄姿を見て、ルフィのように勇気をもって行動できるようになってほしい。そんな思いを胸に仕事をしています。

キャラクターを使えば物が売れる、ということではなく、事業を通してキャラクターそのもののブランド価値を上げ、キャラクターがうまれた意味を伝えていきたいと考えています。

現在では、私たちの活動をいろいろな権利者の方にご理解いただき、徐々に扱うキャラクターの数も増えています。それぞれのキャラクターのファンを大切に扱い、ベトナムで愛されるキャラクターになっていくようサポートしていきたいです。

_1人でも多くの子どもが笑顔になれるといいですね。

日本とベトナムでドラえもんに対するイメージの違いはあるのでしょうか?

“ I want to be Draemon. “

ベトナムの子どもたちが言う言葉です。ベトナムの子どもたちはドラえもんがサッカーやバスケットボールなどのスポーツをしている絵をよく描くんです。ドラえもんに対して「優しくてかっこいいヒーロー」というイメージを持っているんですね。反対に日本ではドラえもんはかわいいだけでなく、便利なひみつ道具で自分の夢を叶えてくれる存在で、自分もドラえもんが欲しい、と思う方が多くいますよね。このように日本とベトナムでのドラえもんに対するイメージはかなり異なります。そのため、事業をするにあたってベトナムに合わせて伝えられているかを常に考えていますね。ドラえもんの便利なひみつ道具だけを伝えてもベトナムの子どもたちは離れていきます。「自分がドラえもんになって家族を助けたい」というベトナムの子どもたちの気持ちを理解しないと何も届かないんです。そこの理解が非常に大事ですね。

_日本のドラえもんのままではベトナムの子供たちには響かないんですね。

グローバルマーケットという言葉を聞いたことがありますか?
これにはいくつか捉え方があって、1つは全世界・全店舗で全く同じ物を同じ値段で売るという考え方です。もう1つはそれぞれの国によって捉えられているイメージや印象が違うなら、それぞれ別のストーリーがあるという考え方です。僕たちがやっているのはブランディングなので後者になります。グローバルクオリティのドラえもんに、ローカルのストーリーをかけ合わせたのがグローバルマーケットだ、と僕たちは考えています。だからこそベトナムの人を知って、ベトナムという国を理解して初めてドラえもんがベトナムの人に愛されることができます。

一般的にビジネスでは既にマーケットがあって、そこをターゲットにして事業をするというマーケティング主導の考え方をしますが、僕らはそうは思いません。僕らはドラえもんを愛してくれているベトナム人の集合によってマーケットが生まれると考えています。マーケットがあるからそこにキャラクターを入れよう、という考えではなく、「僕らがドラえもんを愛されるキャラクターにする=ドラえもんのマーケットが生まれる」というブランディング主導と考えていますね。

大人になってもキャラクターを好きでいてもらう秘訣はなんですか

時間と場所を意識しています。
時間としては、朝起きてから寝るまでのシーンそれぞれにキャラクターが存在できるような設計をすることを大切にしています。生活の中のどのシーンにもドラえもんが存在できるようにするんです。だからお菓子や寝具用品など幅広く商品を用意するようにしています。もう1つは場所です。成長に合わせて、彼らが行く場所にその人の年齢に合ったドラえもんの商品を用意しています。例えばおもちゃ屋さんのキュートなドラえもんから、カフェに置いてあるおしゃれなドラえもんへと価値を変えていくように。他にも5歳の子の身長に合わせた場所に5歳の子に向けた商品を置く、といったことなども意識しています。彼らの求めているものを彼らが求めているであろうデザインで提供することを心がけているんです。このように時間と場所を大切に、それに加えて新しくしていくことを大切にしています。ドラえもんの普遍的な価値を持ちつつも、時代に合わせて新しいものにしていくことは大事なことですね。

_これがドラえもんが皆から愛されている秘訣なんですね。

今度の事業の展望を教えてください

たとえば、ドラえもんについて言うと、ドラえもんの価値を感じる場面をより多く創り出していきたいですね。
その創り出した価値を実現するためには、どういった消費者の行動をうみ出すか、そしてそれを事業にしたらどうなるかを考えています。例えば、「生まれてからずっと一緒のドラえもん」という価値を作り出すならベビーブランドを、「あなたの思いを届けるドラえもん」ならドラえもんから電報が届くサービスを、というように、ドラえもんの価値を事業という形で表現していきたいと思っています。ドラえもんに限らず、扱っているキャラクター全般にこのような価値を生み出していきたいと考えています。

もう1つは、ベトナムから生まれたコンテンツが世界で活躍するサポートをしたいと思っています。
そのコンテンツがアニメになり、映画になり、世界中で大人気になり、「これはベトナムで作られたものだよ」と言えるような、ベトナムの人が胸をはって世界に誇れるコンテンツを1つでも多く作りたいです。ベトナムのキャラクターマーケットは世界に比べてまだまだ小さいです。市場が小さいからこそ、その需要を満たそうとするプレイヤーが少なく、だからこそ良いクリエイティブを出せたとしてもコンテンツとして継続することが出来ずに、世界で戦えない状況にあります。その状況に対して、僕らが日本のキャラクターの管理を通して培ったノウハウなどを生かしてサポートすることができるのであれば嬉しいですね。

_これからのベトナムがとても楽しみですね。

宮本さんが仕事をする中で普段から意識していることはなんですか。

常に自分が何者かというのを考えて動いていますね。
16歳で高校を辞めて社会に出ると、突然自分が何者でもなくなりました。それと同時に、自分は1人では生きていけないということを突きつけられました。これを16歳のうちから知っていたというのは僕の大きな強みですね。社会人になると仕事ができるように見える人が評価されます。でも、自分1人では何もできない、周りに助けてもらわないと何も変えられない、ということを知っていることは本当に大事なことです。僕たちは知らないことがたくさんあって、可能性は無限大にあります。だからこそ、常に周りへの感謝を忘れないようにしています。

営業で誰かに物を1つ売るにしても、そこには様々なサポートがあります。決して自分の力だけで物が売れるわけではないんです。原料を仕入れる人、商品を開発した人、商品を宣伝する人など。このことを知って初めて商品を適切なタイミングで売ることができます。たまたま自分がその役割のうちの1つだったというだけです。このように、自分だけでは生きていけないこと、周りに感謝することというのを早くから意識できていたということが、自分の強みだと感じます。

自身のコンセプトを貫き通す秘訣は何ですか

「誰かのためにやっている」と思うことです。
僕自身、自分のために何かをするとどうしても続かなくて、「人を喜ばせたい」と思うように、誰かのためなら頑張り続けることができます。母の影響もあって、自分の命は頂き物という感覚があり、それを誰かに繋げていかないと生きている意味がないと考えています。だからこそ自分の時間は人のためにしか使わないですし、人が喜ぶ姿を見ることが自分の喜びだと信じています。これが秘訣です。辛いことがあっても、それは自分以外の人が感じるかもしれないつらさであって、今ここで自分がつらさから逃げてしまうと、もしかしたらベトナムの子ども達はドラえもんに当面会えないのではないかと思ってしまいます。誰かがいつか直面する問題だから今ここで自分がクリアすれば、その先の誰かが喜んでくれる。そう思えば、つらいことも乗り越えられますね。

また、自分自身のコンセプトを発信することも大切です。
自分の信念を貫けないのは、「周りから応援されないのではないか」という不安があることが原因ではないでしょうか。自分自身を発信することで、「宮本さんに何か言えば、子ども達が楽しめる企画を何か考えてくれるのではないか」と思ってもらえますよね。自分が何者かを発信することで応援してもらえるし、周りを巻き込む力にもなります。僕は同じような気持ちを会社のメンバーにも求めています。前提として、自分が信じていることを一緒に信じてくれる人と仕事をしているから会社があるし、それぞれが発信していかないと会社としての存在意義がありません。
だからこそ僕たちTAGGERは「ベトナムのすべての人一生忘れられない瞬間を届けます」ということをホームページで発信しています。発信すれば周りは助けてくれるので、それが本気ならたくさん発信した方が良いと思いますよ。

_ありがとうございました。

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