【Manabie②】ベトナムでオンラインとオフラインを掛け合わせ、ベトナムに密着したチームで最高の教育を目指す。
- 2021.01.09
- Companies
本記事は、2020年8月にベトナムの日本語情報誌Vetter及びWebポータルVIETEXPERTに掲載された記事をもとにVetterより寄稿いただいたものです。当時の記事を再構成したうえで、新たな質問も追加し、Manabie CEOの本間氏に回答いただきました。②では、ベトナムで創業した後のManabieのサービスや世界と日本の教育の違い、ベトナムのチームビルディングなどについて伺いました。前回の①はこちらから。
6.どうしてマナビーを”ベトナム”で立ち上げようと思ったのですか?
人口的に市場性があるということ、そして東南アジアのなかでも教育熱が高いということです。
ベトナムの就学率は小中学校では9割を超えていて、高校が7割、工業系の専門課程を含めた大学進学率が4割程度です。学校での集団授業がメインで、7割くらいの子どもたちが塾などで補完教育を受けています。「塾」といっても、学校の先生が副業として自宅に子どもを集めて教えているので、クオリティにばらつきがあり、最近は政府がこれを禁止し始めています。
参考書などの副教材についてもまだまだ改善の余地があるように思います。教育熱が高く、市場も大きいのですが、まだ古い体制での勉強方法や学習の仕組みが強く残っていて、オンライン教育によって解決できる問題のインパクトが大きな市場だと感じたので、ベトナムでマナビーを創業しました。
7. マナビーで提供している教育とは、どのようなものですか?
インターネットで質の高い教育にアクセスできても、自分で目標を設定し、やり方を考えて学習を続けられる人はそれほど多くありません。大人向けのオンライン教育でさえも終了率は5%という数字が出ています。
「教育へのアクセス」は順調に増えていますが、アクセスできた後に、きちんと自分で学習できるか、そして学習を継続できるかが今後の鍵になってくると思っています。中高生にモチベーションを保って自分で勉強しなさいと言うのは酷なので、マナビーでは一人で学ぶのが困難な子どもたちに向けたサポートにフォーカスしています。
例えば、ひとりで勉強して行き詰まっている時に勉強の仕方をアドバイスしたり、進路の相談に乗るなど、これまでは先生やチューター、ご両親がされていたところを、テクノロジーを使うことによって効率的に提供することを試みています。
オフラインの教育には、100年単位で積み重ね、磨き上げられてきたノウハウがあると思っています。例えば皆が同時に同じ内容を学ぶシステムや宿題や予習復習など、効果の高いメソッドもあります。それをオンライン教育に効率的に取り入れています。一例ですが、決められた時間にライブ授業を行うことで学びに強制力を持たせるようなことも行なっています。
8. 現在、マナビーの会員数や料金はどのようになっていますか?
オンライン教育の会員数は無料会員も含むと15万人となっています(※)。
料金は塾は月100ドルくらいで、オンラインの方はその3分の1くらいでやっています。今年に入ってオンライン教育への注目度が増したこともあり、想定よりも早くプロダクト開発を進めました。1年後には2万~3万人の有料会員数になることを目指しています。また塾に関しても、今後はハノイやダナンにも開校していきたいと考えています。
※2020年8月時点
9. 将来的に、学校が完全にオンライン化すると感じますか?
学習はオンラインだけで完結しなくてもいいと思っています。大学は完全オンライン化されてもいいのではないかと思いますが、高校まではそうは思いません。勉強するだけならオンラインだけでいいと思いますが、小学校から高校までの学校の価値は、その場に集まって、人間として生き方を学ぶというような側面もあると思います。部活だったり課外活動だったり。
そういう場には、人とのコミュニケーションやリーダーシップなど、生きていく上でとても重要な学びがあります。学問を勉強するだけでなく、人間関係の中で経験することは、より深い学びを得るためのよい方法だと思っています。ですので、そこはオフラインのままがいいのではないかと感じます。
マナビーでも、ホーチミン市内に「塾」を5教室ほど運営しています。前述したとおり勉強の強制力を持たせる意味もあるのですが、勉強以外の部分を学ぶ意味でも、そこに行けば一緒に学ぶ仲間に会える塾のような場所がある方がいいと思っています。オンラインとオフラインを併用していくことで、よりいい結果が残せると信じています。オンラインとオフラインを良い形で組み合わせることで、それぞれの生徒にとって最高の形となるラーニングジャーニーを提供していきたいです。
10.世界各国の教育現場を見てきて、日本の教育との違いをどのように感じましたか?
東アジアにおける教育は、知識の装着というところに重点を置き、それに対して欧米では、クリティカルシンキングやディスカッションなどの能力を育成する教育が行われていると一般的に言われています。
これはどちらも重要で、どちらかだけやればいいものではありません。教育にはいろんな要素が必要で、それを各国が制度として取り入れていく過程でどれをどのように優先づけていったかということなのだと思います。
例えば日本での学校教育は、受験勉強が重要視されますが、それは社会が経済成長していく過程で工業化のための人材育成に求められた知識を測ることが必要だったからです。
率直に言えば、僕が学校の授業に興味を失ったのも、そういう画一的な部分ではあったのですが、逆に欧米では基礎学力の養成が課題になっているそうなので、現段階では、それぞれが自分たちにない教育文化をお互いから学んで取り入れようとしているのだと思います。
その試行錯誤も、インターネットを活用することで効率的に進めることができるでしょう。プライベート教育のなかでEラーニングを取り入れることで、学校教育ではカバーしきれない要素の学びにアクセスすることができます。世界中の教育を受ける機会は無限にあり、環境は整ってきているので、子どもたちにとっては国よりも家庭の教育フィロソフィがより重要になってくると思っています。
11.ベトナム人のコアメンバー採用やチームビルディングはどのようにされていますか?
現在、100人くらいのメンバーがいるのですが、コンテンツやセールスといった部門ごとのマネージャーから採用していきました。LinkedInでこちらが求める経験やスキルなどで検索し、リストに上がった人に対してアプローチする方法で採用しています。
チームビルディングについては、各人の当事者意識を育てながらボトムアップで仕事を作り上げていくカルチャーを意識した結果、とてもいい感じのチームができていると感じています。
12.具体的にはどのようなチームビルディングをされていますか?
週1回オンラインでつながって、メンバー同士の成長や小さな成功体験を称え合うことをしています。他には、私がメンバーと1on1で面談したことや、私が考えていることを動画で全社に共有して、会社は何を目指しているのか、メンバーがどういうところでチャレンジしているのかといったことを全部公開するようにしています。社員の持っている問題意識を出し合うことで透明性のあるマネジメントを心がけてきました。
教育に関しては誰もが自分なりのフィロソフィを持っています。こうした場はベトナム人社員たちが自分の国の教育をこうしていきたい、というヴィジョンを聞く機会にもなっています。それぞれに考えが違う部分はあっても、目指す世界は同じであることを確認しながら、そのためにどういう優先順位をつけて、今は何をやるべきかという話し合いができるようにしています。