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【Capichi 森さん インタビュー】言語を超えた「食」サービスでわくわく体験を世界に。

「A world where people’s hearts will be full without any borders.(どんな人々の心も満たされる世界)」をビジョンに掲げ、国籍を超えて「食」のわくわくを届けるCapichi。

ベトナムを中心に、デリバリーサービス「Capichi Delivery」と飲食店QRオーダーシステム「Capichi OI」を拡大中だ。日本の東証プライム上場のIT企業との資本業務連携などさらに勢いを魅せる「Capichi」について、代表の森さんに過去を振り返りながらお話を聞いた。

【プロフィール】
森 大樹(もり たいき)さん
株式会社Capichi代表取締役。
1997年生まれ。奈良県出身。神戸大学 国際文化学部 卒業。
大学3年生の夏休みより、休学してベトナムに移住。インターン生として現地のIT会社でオフショア開発の営業・PM(プロジェクトマネージャー)を1年半担当。その後22歳の時に株式会社Capichiを設立。

株式会社Capichi
2019年7月に日本法人、2020年3月ベトナム法人設立。ビジョンである「A world where people’s hearts will be full without any borders.(どんな人々の心も満たされる世界)」を掲げ、動画版グルメサイトのサービス提供を開始した。
2020年のコロナ禍以降はフードデリバリーサービス「Capichi Delivery」にサービス転換。
多言語対応と飲食店とサービスの質にこだわり順調にユーザー数を増やしたのち、2023年以降は飲食店QRオーダーシステム「Capichi OI」のサービス提供も開始した。

Capchiのサービスの強みについて

コロナ禍以降、アプリ登録者14万人超えのフードデリバリーサービスCapichi Delivery。
改めてCapichiDeliveryの強みは何なんでしょうか?

目指すは「Capichiで注文すれば安心できる」

良い店舗を厳選し、お客様の体験にこだわっていることです。他にもフードデリバリーサービスはありますが、いろんな店が1万店舗入っていて路上屋台やよくわからないゴーストキッチンなどいろんな店が含まれているんですよ。

同じようなスタイルでたくさん店を掲載するのではなく、僕らは自分たちの「良い店の基準」を作っていてそれで審査して、掲載店舗の質を担保する努力をしています。店側から連絡をいただいた場合、商品を店からテストで送ってもらい、包装がしっかりしているかどうか、お客様に満足してもらえるか等のチェックをしてから掲載しています。僕たちは料理のプロじゃないので、味のチェックはできません。ですが、デリバリーで料理が届いた時のユーザー目線で満足できるかどうかのチェックはできると思っています。

そうすることが、結果的にユーザーの信用を積み重ねてCapichi側の掲載店の売上にも貢献できるので、これらのチェックをすることは必要と考えています。その上で、注文において何か問題が起こった時はすぐにCapichiのサポートチームで、リアルタイムでお客様をサポートさせていただいています。

そうすることで、僕たちは「Capichiで注文すれば安心できる」を目指しています。ユーザーさんからもそのような声は頂いていますが、これからも更に向上していきたい部分です。

新サービス「Capichi OI」の展開

2023年からは本格的にQRオーダーシステム「Capichi OI」もスタートさせたそうですね。
CapichiOIの強みについても教えていただけますか?

「メニューはブランドやお店の魅力をお客様に伝えるためのもの」

1つ目はCapichiDeliveryを通じたユーザーの注文体験を良くするための「スマートフォンでもお店のメニューがわかりやすく、注文を簡単にできるようにする経験や知見」が高いことです。
それを活かしてお客様が買いやすい・見やすいオーダーシステム・デジタルメニューを作れるのが強みかなと思っています。

2つ目はページをカスタマイズできることです。
レストランによってメニューは千差万別で、それぞれが自分たちの店のブランドや魅力をアピールするものだと思っています。ただメニューを確認できればいいというよりは、それによって押し出したいものは押し出すし、お客様により多くのメニューを注文させたいと思わせないと意味がないです。そうできるように店舗ごとにページをカスタマイズできるのが大事だと考えて、その機能を作っています。例えば店の雰囲気に合わせてメニューの背景を黒くしたり、料理の見せ方もサイズの大小を替えたり。カスタマイズして、それぞれの店がそれぞれのブランドをアピールできるようにしているのが強みだと思っています。

3つ目は多言語対応ですね。
Capichi Deliveryと同様に多言語対応をして、いろんな国のお客様が自分たちの言語で簡単に注文できるようにしています。例えば日本料理だったら日本人は簡単に注文できるけど、ベトナム人や欧米人、韓国人が来た時に言葉だけだとイメージが出来ないことも多いと思います。そんな時に写真があればより分かりやすく、さらに母国語の説明があればイメージができます。イメージが出来れば、より食べたい・買いたいと思えますし、注文を増やせる、というのが強みだと考えていますね。

Capichi OIは実際どんなところで使われているのでしょうか?

日本・ベトナム・タイの3か国の飲食店やホテルで使われています。ベトナムよりもタイや日本のほうが、多言語コミュニケーションのニーズの高さや人件費高騰などを理由にCapichi OIのニーズが高いです。

日本においては、様々な企業と連携してCapichi OIの普及を目指しています。たとえば、HISグループと連携を開始していて、原宿にHISのツーリストセンターという観光案内やお土産を販売している店舗で僕らのサービスを使ってもらい、どんな国籍の人でも、店内のすべての商品の説明を様々な言語や動画写真付きで見られるようにしています。日本のPOSシステム「スマレジ」とも業務提携していて、HISでもスマレジとCapichi OIを一緒に導入していきます。

*株式会社エイチ・アイ・エスが運営する「原宿ツーリストインフォメーションセンター」で訪日外国人向けに7言語対応Capichi OIスマートオーダーシステムを導入(2023年9月28日)

 

クレスコとの資本業務提携

2023年9月に株式会社クレスコ(以下クレスコ)からの50万ドル(日本円でおよそ7,300万円)の資金調達と業務提携が発表されましたね。なぜ資金調達先としてクレスコを選ばれたのでしょうか?

1つ目は事業での連携ができるということですね。今回の発表のとおり、クレスコには日本の代理店として日本展開の加速にも協力いただきます。クレスコからの出資の上で協業することで、両者にシナジーが生み出せると判断しました。クレスコはプライム上場企業としての信用・ネットワークもありますし、強い組織があります。そのチームでどんどんCapichi OIを広げていってくれるというところ、さらにITの開発会社として開発部分でも一緒に協力していけるというところで大きいメリットがあると思います。

2つ目はクレスコの経営陣にお会いし、経営陣の考え方・人柄を見て、「この方々と一緒に事業を展開していきたい」と直感的にも思えたところです。

株式会社クレスコ「ベトナムのレストラン&リテールテックスタートアップ企業「CAPICHI」への出資と業務提携に関するお知らせ」

日本国内においては、今後インバウンド需要が高まることが予想される中で、飲食店の人手不足は社会課題のひとつとなっています。CAPICHI社のF&B(フード&ビバレッジ)市場における知見と当社の技術を組み合わせて、飲食店のDXを実現し、課題解決の一助を担うべく、業務提携を決定いたしました。

業務提携により、当社はCAPICHI社のQRモバイルオーダーシステム「Capichi OI」の日本国内総代理店として販売いたします。「Capichi OI」は多言語対応、システムのカスタマイズ性、観光インバウンド対策に特化しているという強みがあり、飲食店のみならず、小売店、宿泊施設のDX化と外国人顧客の満足度向上に貢献します。

また東南アジアでは、在庫管理や仕入などの管理業務において、IT化が遅れている店舗や業界も存在します。CAPICHI社が窓口となり、多種多様な業界のお客様のシステム開発を手掛けてきた当社の知識や技術を用いて、現地企業のDXを推進します。

その他詳細は、以下のリリースより。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000109727.html

ー具体的にクレスコの役員の方々のどんな人柄に惹かれたのでしょうか?

言葉に嘘がないところです。お世辞を言わないし、僕らに対する期待も心配も正直に伝えてくれます。1年以上Cresco Vietnamさんと協業関係があって、信用できる企業・方々だなと思えました。期待をちゃんと伝えてくれるからこそ、僕らに何を求めているかもわかりやすいです。

投資をしていただいて一緒にやっていく以上は、お互い利益を求めていくビジネス関係だけではなくて、「一緒にやっていく軸がしっかりしているかどうか」「この人と一緒にやっていきたいかどうか」を特に大切にしています。

そうなんですね。これからクレスコとのより密接な連携を取っていくことになりますが、Capichi OIにどのような影響があると考えていますか?

「Capichi OIをより早く日本の様々な地域へ」

影響を与えられる地域範囲が広がると考えています。
クレスコがCapichi OIを日本で広げてくれれば、Capichiが自分たちだけで日本で広げるよりもはるかに早いスピードで日本に展開できる可能性が高いと思っています。

やはり自分たちだけではできないことも多く、日本は人件費も高いですし、誰が管理するのかという問題もある。そこで彼らがリスクを背負ってやってくれるので、僕らのサービスをより多くの人にスピード感をもって届けられると考えています。

僕らは自分たちのサービスを使ってもらうことで世の中が良くなると信じているので、サービスが広がることは僕らにとって嬉しいことですね。

ー今後のサービス展開が楽しみですね。

 

ベトナムでの起業について

話は変わりますが、森さんは2年弱のIT会社でのインターンシップを経て起業されましたよね。なぜ “ベトナム”で ”起業”したのでしょうか?

「失敗してもむしろチャンスが広がる」

そもそもの会社を起業したいと思った理由は、大学1年〜3年まで東日本大震災の被災地の岩手県釜石市、大槌町、山田町の沿岸地域でボランティアしていたことがきっかけです。ボランティアに10回ほど行った中で、「世の中を根本的に良くして、それを継続させていきたい」のならば「お金がまわる仕組みを作らないといけない」と考えるようになりました。ビジネスとして会社を作っていくことで「世の中にあるマイナスなことをプラスに変えていく」ようなことがしたいと思っています。

僕は20歳の時、インターンでベトナムに来ました。ベトナムに来る前まで日本で経営層の方に会ったことも話したことも殆どなく、経営者がどんな人かもわからない状態でした。

でもベトナムに来たら、IT会社のお客様の社長さんや現地に住んでいる経営者など社長クラスの人と話す機会が増えたんですよね。「20歳でベトナムで働いている」っていうことだけで興味を持って会ってもらえるんですよ。「なんでベトナムきたの?」「卒業したらうちの会社においでよ」とか。その時に気づいたんです。

「ベトナムで起業してチャレンジするということは、それだけでレアな存在になれる」。

日本で起業する人は数多くいるけれど、ベトナムで20代前半で会社を創る人なんてほぼいません。色々な方の話を聞くなかで「一見するとリスクを冒しているように見えるが、実はチャレンジするということがむしろリスクをなくしている」と考えるようになりました。言い換えれば唯一無二の存在になれるということなんですよね。

起業して万が一失敗したとしても、
「起業にチャレンジして失敗したという経験が、将来必ず武器になる、失敗してもむしろチャンスが広がる」と気づくことが出来ました。その気づきのおかげで、僕はベトナムで起業するということに対して一切の不安はなくなりました。

そして、ベトナムで起業をすることにした最大の理由はベトナムで住んで働く中で、ベトナムという国とベトナム人をすごく好きになり、その可能性の大きさを確信したことです。特にベトナムのITの技術力の高さは世界で戦えるものだと確信しました。起業をすることにリスクがない上に、ベトナムには大きな可能性しか無いなら、起業するしかないですよね。

岩手県大槌町の祭りに踊り手として参加させてもらった時の写真

 

起業後一番のピンチは何でしたか?

交通事故が人生観の転換点

バイクの交通事故に遭った時期(2020年9月頃)がちょうど起業してから1番しんどい時期でした。
事故の半年前にCapichi Deliveryをリリースして、現地の日本人界隈では結構反響がありました。でも、当時はサービス自体有名になった割には、サービスの売上はあまり伸びておらず、赤字が続いている状況でした。一方でサービスの知名度は上がっていたので周りからはちやほやされることもあり、世間からの見え方と現実のギャップですごく苦しかったんです。

そんな時にバイクで大事故に遭い緊急手術を受けて、会社が赤字状態にもかかわらず、2.3週間仕事が出来ない状況になりました。まさに自分自身も会社もピンチになりました。それでも交通事故があってよかったなと思っています。

ーひどい交通事故だった中で、どんなことが良かったんですか?

事故に遭って、人生観が2つプラスに変わりました。
1つ目は「人間いつ死ぬかわからない」とより確信を持って思うようになったことです。当たり所が悪かったら死んでもおかしくないほどの事故でした。

「いつ死ぬのかわからないからこそ、今自分がやりたいことを悔いがないようにやり切らないといけない」と思うようになりました。
交通事故に遭って、逆に吹っ切れて、むしろこうやってチャレンジできていることが幸せに感じて、その当たり前に感謝するようになりました。

2つ目は起業による孤独の辛さが解消されたことです。
コロナ禍でベトナムに日本から遊びに来る友達や家族もおらず、仕事ばかりしていて周りとの交流も殆どなかったので、「自分の周りには誰もいない、誰からも愛されていない」と感じていました。

でも、いざ交通事故に遭ったら、すぐにたくさんの周りの人が助けてくれたんです。会社のスタッフ、ベトナム現地の友人など周りの人からの愛を感じました。その時自分は「1人じゃない」と気づきました。自分が「1人である」と思っているだけで、でも本当は周りにはたくさんの人がいる。当時の自分は自分の方にばかりベクトルが向いていて、周りにベクトルが向いていませんでした。事故をきっかけに、周りの人に恵まれて、好きなことに挑戦ができている自分は幸せ者だと思うようになりました。それで気持ちがすごく楽になったんですよね。

 

会社メンバーとのコミュニケーション

会社のメンバーに普段から意識的に伝えていることはどんなことでしょうか?

「自分が何か成し遂げたいと思っていることを強く描き続けること」
「強い自信を持てるほどの努力をすること」
「絶対にあきらめないこと」

まず「自分が何か成し遂げたいと思っていることを強く描き続ける」ことです
例えば、昨年(2022年)神戸大学を半年間オンラインで24単位取って卒業しました。24単位取り切れなかったら卒業できていません。でもその時僕は全く「卒業できない」というイメージはなくて、卒業して喜んでいるシーンだけを描いていました。だから卒業できたと思っています。自分が達成できることをずっと描き続ける、そして「絶対できる」と強く信じ続けることですね。

そしてどうやったら達成できるかを逆算して考えて、そこに対して誰よりも努力していると思えるくらい努力することが大事だと思っています。誰よりも努力していると思えたら、それが自信に繋がるじゃないですか。そして自分の未来をより強く信じることにつながるわけですよね。そのような強い自信を持てない間はまだ努力が足りていないと思います。

最後に一番大事なのは、絶対にあきらめないということです。すごく苦労もあるし、あきらめそうになることも何度もあると思います。それでも描いた未来が達成できるまで諦めずにやり続ける、そうすることで僕は自分が思い描いている未来は絶対に叶えられると思っています。

会社自体の目標に対しても、メンバー自身の夢・目標に対してもこのような心意気を持ってほしいなと思って、会社のメンバーに伝えていますね。

 

今後の挑戦について

Capichiとして今後挑戦していきたいことはありますか?

ただ利益を追い求めていくだけではなくて、僕らのサービスが広がっていくことで、社会の問題が同時に解決されていくようなことにチャレンジしていきたいです。それが自分が起業をすると決めた理由でもあり、そういうものを作っていきたいと思っているので、社会問題の解決に挑戦していきたいというのはありますね。

まず現在取り組んでいる事業を必死に拡大させ、そうした社会課題への取り組みもしっかり行っていきたいと考えています。

最後に日本の若者にメッセージをお願いします。

「起こった出来事をすべてプラスにしよう」

日々いろんな出来事が起こると思いますが、起こってしまったことは良いことでも悪いことでも、もう僕らにはどうしようもないじゃないですか。

でも自分の捉え方次第、その後の行動次第で、どんな出来事もプラスになります。例えば「会社で退職者が出た」という一見マイナスなことでも、「新しい社員を入れて社内の雰囲気を変えるチャンス」という風に、起こったこと全てに対して、プラスに捉えて行動することは可能だと考えています。

そうすれば「あの時あの”一見すれば悲しいこと”があったから、今こうしてプラスになったよね、だからあの時があってよかった」と思えるようになります。「起こった出来事をすべてプラスにしよう」とする心意気があれば、人生が楽になると思います。チャレンジすればするほどつらいことが起こるけれど、それでも心折れずにやっていける。「これも将来の成功のための糧やな、むしろ起こってよかったな」とその都度思って切り替えていけば、うまくやっていけるんじゃないかなと思います。

2022年忘年会写真

 

Appendix:Capichiのサービス概要

○Capichi Delivery
2020年4月サービス開始。アプリ登録者数13万人を持つフードデリバリーサービス。契約店舗数は1,400以上。日本人などの外国人やベトナム人富裕層をメインターゲットとし、7つの言語(日本語・韓国語・中国語(簡体字・繁体字)・英語・ベトナム語・フランス語)に対応し、幅広い国籍の人に「安心」「満足」のフードデリバリーを提供している。現在はハノイ・ホーチミン・ダナンでサービス提供をしており、2023年末からバンコクでもサービス提供を開始する予定。
Capichi Delivery ダウンロードURL:https://capichi.onelink.me/HdVc/kktsdofb

オーダー商品例

Capichi Delivery App

 

 

 

 

○Capichi OI
2022年9月にサービスを立ち上げ、2023年以降本格的にサービス展開するオーダーシステムサービス。日本・タイ・ベトナムの3か国で展開し、現在およそ150の店舗でサービスが導入されている。現在は、7言語(日本語、英語、韓国語、中国語(繁体字・簡体字)、ベトナム語、タイ語)に対応している。

導入店舗の例

 

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